中間省略登記における契約類型
不動産売買において、登記中間省略が再び出来るようになりましたが、そもそも中間省略は、主に業者が転売目的物件の経費節減のために使う手法で、通常は売主の不動産を出来るだけ安く購入し、買主を見つけて利益を上乗せして売却するわけです。
売買とはあるモノの所有者が「譲渡人」となり、そのモノを欲する相手方が「譲受人」となって相当対価を支払い、そのモノの所有権を移転せしむる法律行為です。
売主Aはモノを譲ることで金銭対価を得ることを目的とし、買主Bはモノの占有・使用・所有を目的とします。
第三者のためにする契約
しかし、買主Bの目的はモノの占有・使用・所有には無く、転売利益を得ることですから、当該「売買契約」も当事者の目的に沿って締結されるとするならば、買主Bが当該物件を別の誰か(第三者C)に売り渡すことを前提とした契約内容にすべきという考え方になるのは当然です。
したがって、転売人Bの所有権を登記せずに第三者Cへ直接所有権登記を移転させる理由(登記原因)を「当該買主Bの譲受目的は第三者Cへの譲渡」とすることで、A-B、B-C問の物権変動(所有権移転)をAからCへの物権変動であると認めるとしたわけです(運用)。
買主の地位の譲渡
一方、買主の地位の譲渡は、A-Bの売買契約において、同様にBの地位を譲渡することを予め約定し、第三者CがBの地位を譲り受けた場合、当該売買契約はA-C間で締結したものとするものです。いずれの場合も契約内容、登記原因情報共にそのことを明文化し、売主A及び第三者Cの承諾を得て登記を直接移転させることが前提となっています。
したがって、よく行われている「転売利益を得る売却行為を売主には伏せたまま」の登記中間省略を容認したものでは無いので、A-B・B-C間においてそれぞれ別個の売買契約が成立する形態とするなら、現行の登記制度上やはりそれぞれに公示(登記)することが求められてしまいますので注意が必要です。
相違点
ただし、どちらの契約形態を採った場合でも、予め第三者Cの具体的な指定がなされている必要は無く、A-B間の代金決済後でも、Aに登記を留保したまま(二重譲渡又はAの債権者からの執行手続き等のリスクはあるが)転売先を探すことも出来ますし、Bに登記を移転(移転先をBに指定する意思表示要)することも出来ます。
また、Aに対して新たな印鑑証明書等の登記必要書類の提出を請求しすることも可能です。
宅地建物取引業法施行規則の一部改正
規制改革・民間開放推進会議の「規制改革・民間開放の推進に関する第3次答申」(平成18年12月25日)において、甲乙丙の三者が売買等に関与する場合であっても、「第三者のためにする契約」又は「買主の地位の譲渡」により、実体上、所有権が「甲→丙」と直接移転し、中間者乙を経由しないときには「甲→丙」と直接移転登記をすることが可能である旨、規制改革・民間開放推進会議と法務省との間で確認され、日司連を含む関係機関に周知されました。
しかしながら、甲乙間の契約を「第三者のためにする契約」として締結し(所有権は、第三者のためにする契約の効力に基づき、甲から丙に直接移転する旨の特約を付される)、乙丙間を他人物の売買契約として締結する場合において、乙が宅地建物取引業者で丙が一般消費者であるときは、乙丙間の契約は宅地建物取引業法第33条の2(自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限)に抵触することから、本年の規制改革会議においてさらに検討が進められ、今般、『規制改革推進のための第1次答申』(平成19年5月30日)において、「乙が他人物の所有権の移転を実質的に支配していることが客観的に明らかである場合等、一定の類型に該当する場合にはこの規定の適用が除外されることが明確となるよう、国土交通省令等の改正を含む適切な措置を講ずる必要がある。」とされたところです。
この答申を踏まえ、「宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する省令に関するパブリックコメントの意見募集」(6月8目~7月7目)が実施され、7月10日、別紙(官報第4622号)のとおり、宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する省令(国土交通省令第70号)が公布・同日施行されました。